いわた書店の1万円選書でオススメ!「カーテンコール!」あらすじ&感想

加納朋子さんの「カーテンコール!」という本。
「1万円選書」で話題のいわた書店がテレビでオススメしていた本で僕もずっと気になっていました。

この本のキャッチフレーズは「幕が下りた、と思ったその先に、本当の人生が待っていた。」

現代特有の悩みや病気で苦しむ若者を的確な視点で俯瞰して見てくれる作品で、
現代社会におけるマイノリティーの生きづらさを描いています。

暖かさと優しさに満ちた作品で、若い人にオススメの内容だったのでご紹介します。

 

 

特に読んで欲しいのはこんな人

この本のテーマは「マイノリティーの生きづらさ」ですが、
今の若い人はみんな何かしらのマイノリティーだったり、
何か1つは悩みを抱えているのではないでしょうか。

そんな若い10代、20代の
学校とか会社の集団の中にいる人に特にオススメの1冊です。

 

「カーテンコール!」のあらすじ

経営難で閉校になることが決まっていた萌木女学園。

卒業できなかった学生は大学中退となってしまうので、おじいちゃん理事長がなんとか全員卒業させようとあらゆる手を尽くすが、
それらを全てくぐり抜けてしまった「ワケありの」強者学生たち。このままでは単位不足で卒業できない。

みんなそれぞれに問題を抱えていて、
「これで人生詰んだ」と思った学生が何人もいる。

しかし、ここからおじいちゃん理事長たちによる半年間の特別補講が始まる。
それぞれの事情を抱えて人生に詰まっている女子大生が理事長たちの力で
「もしかしたらまだ詰んでいないかも」と思い始める。

 

おじいちゃん理事長たちが問題を抱える学生たちを心身ともに支え、学生一人一人の将来を見据える教育をしていく。

物語は6つの短編から成り、同じ舞台なんだけど各章ごとにメインの人物が変わる構成。
卒業の危機に直面する「9人の学生」が6章にわたって紹介されていく。

 

【第1章】砂糖壺は空っぽ

この章で紹介されているのは、トランスジェンダーの綾部桃花。
小学校の時からずっと違和感を感じていて周りからもからかわれたりしてきた。

本人は自分を「間違えて砂糖壺に入れられてしまった塩」と表現。
これからこの砂糖壺に何を入れていけばいいのか、と絶望していたが理事長の話を聞いて希望が生まれる。

 

【第2章】萌木の山の眠り姫
朝が苦手で授業中に居眠りばかりしている梨木朝子と有村夕美。
梨木朝子は朝起きれず遅刻ばかりで単位を落としまくったことで自分をずっと責めていたが、
有村夕美と出会って自分が起立性調節障害ということを知る。

ナルコレプシーという病気で感情が揺れた時に眠ってしまう有村夕美。

理事長のアドバイスによって二人でそれぞれの生活の仕方を学んでいく。

 

【第3章】永遠のピエタ

夜な夜な小説を書いてネットにアップしている金剛真実。
エナジードリンクの飲み過ぎでカフェイン中毒の離脱症状に悩んできた。

授業中にも頭痛をはじめとする症状に苦しんで
「ゾンBショック」というエナジードリンクを手放せなくなっている。

おじいちゃん理事長たちが管理して
エナジードリンクの量を減らしていこうと格闘していく。

 

【第4章】鏡のジェイミ
太ってしまう恐怖で拒食症になった細井茉莉子と
「フィーダー」という娘を太らせるべく美味しい食べ物を作り続ける母親によって肥満症になっている小山千帆。

正反対のようで同じ悩みをもつ二人がお互いを見つめつつ、
改善する努力をはじめていく。

 

【第5章】プリマドンナの休日
卒業できないことをわかっていて「今しかできない経験をしたい」と休学をしていた矢島夏鈴と
妊娠して子供を育てていたために休学していた優等生の喜多川菜々子。

順調に過ごした中、それぞれの理由で休学をしてしまった二人。
葛藤しながらそれぞれの人生を考えていく。

 

【第6章】ワンダフル・フラワーズ

自傷行為をやめられなくなってしまった清水玲奈。
完璧主義でちょっとしたことを許さない父親をもつ。

幼い頃から両親が対立していて、父親の教育に対する圧力に苦しんできた。
自傷行為をすることで父親の圧力から逃れようとする。

おじいちゃん理事長とそんな人生との向き合い方を学んでいく。

 

最後はおじいちゃん理事長の抱えてきた教訓と卒業式でのお話で締めくくられます。

 

昔、父親と女性が学べるようにと萌木女学園の大学作りに励んでいたおじいちゃん理事長。
その陰で地域の名家に嫁に行った姉が登場する。

理事長と父親が大学作りに励む一方でその姉は妊娠したが中絶。
嫁ぎ先の家でいじめを受けていたという。
その時代には珍しいことではなかったが姉にとっては辛いことで命を落としてしまう。

SOSをなんども送っていたのに、大学作りで忙しさに甘えて耳を傾けなかったのを後悔している理事長。
学生たちを支える裏に些細なことも見過ごしてはいけないという理事長の教訓がある。

 

「カーテンコール!」を読んだ感想

著者の加納さんのメッセージは、
傍目には「なんで?」と思ってしまうような言動にもその人の事情があるかもしれないということ。
自分に気づいていないこともありうるのだなぁと改めて思いました。

 

そして著者の若者へのメッセージが卒業式でのおじいちゃん理事長の最後の言葉として書かれています。
これから社会へ出ていく人、新しい環境に入っていく人へのエールのようです。

「もう駄目だ、耐えられないと思った時、自分の足で逃げられる力を、今のうちに育てて下さい。
そして、自分の言葉で、直接「助けて」と言える人を探して下さい。
我と我が身を救うための、知恵と勇気を身につけて下さい。」

これは今の時代に必要なことだと思いました。

第6章に登場する自傷行為をやめられなくなってしまった清水玲奈のように、
何か理不尽なことに直面したときにはなかなか逃げられないのが現実だと思います。

 

そしてこれは家庭環境だけでなく、社会問題になっているブラック企業も同じです。

僕は以前ブラック企業にいたことがあって、
そのとき体調を崩しかけていました。

しかし、そう思ってもブラック企業相手だとなかなか逃げられない人も多いです。
若者の労災もニュースになっていて「そうなる前に逃げないといけない」という意見もありますが、
本人たちにとってはそこから逃げることはとても難しいことだったと思います。

 

それにこの理事長の教訓は、家庭でも学校でも塾でも同じことが言えると思います。

学校でも何かに頑張って続けることは教えてくれますが、
何かから逃げる方法は教えてくれません。

理事長のいう通り、清水玲奈はこの父親からの逃げ方を知らないといけないし、
それぞれは抱えてしまった病気や現代特有の病との付き合い方を学ばないといけないです。

 

カーテンコール!の本について

【著者】加納朋子さん
【発行】2017年12月20日

カーテンコールに興味を持って方はこちらから購入できます。
(楽天のページへ飛びます)

 

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